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…ボフッ!!

布団越しに伝わる人の重さに何が起きたのかと顔をあげる。
視線の先には、赤のチェックが印象的な制服に身を包んだ女の子がこちらを見てニヤニヤしている。

???
「布団にこもって、ナニしてたの?」

【鈴城 繭】
「な、何もしてねぇよ!」

???
「なぁんだ、ツマンナイ~♪」

何かを期待するような女の子は頬を膨らませつつも、それも一瞬の事でこちらに笑顔を向けてくる。

小鳥遊 結(たかなし ゆい)
この屋敷、小鳥遊家の次女。やんちゃでワガママ。絵にかいたようなお嬢様。お子様体系。

【小鳥遊 結】
「誰が、ぺちゃパイだって?」

【鈴城 繭】
「誰も言ってねぇよ」

【小鳥遊 結】
「じゃあ、妄想してた?」

上目づかいで覗き込んでくるとか、男心を見透かしてるとしか思えないこれが世に言う小悪魔系か。

朝から女の子に「ナニ」なんて言われる日が来るなんて考えもしなかったけどな。


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【小鳥遊 薫】
「それと…抵抗はしないでね?」

言われた理由が掴めず、疑問に思うのと結が傍に寄ってくるのは同時だった。結は何も言わず、俺の服に手をかけてくる。

【鈴城 繭】
「ちょ…ゆ…んっ」

結の人差し指が俺の唇に添えられる。その行為に薫の言葉の意味を察する。

【小鳥遊 結】
「抵抗しないで、ね?」

首筋に息がかかるくらい近く、身体を寄せてくる結。
結の細い指が俺のシャツのボタンを不慣れながらも、ひとつ、またひとつと外していく。

【鈴城 繭】
「ぉい、なにをっ!」

【小鳥遊 結】
「おい…なんて呼ばないで…そんな風に呼ばれたら、ボクのココロにつく傷以上にこの肌に爪立てちゃうよ?」

言うが早いか、ボタンが外され、あらわになった胸元に結が爪を立ててくる。
ナイフを首元に充てられたような緊張感の中、耳元で吐息交じりに囁いてくる。

【小鳥遊 結】
「私達姉妹の事は、様を付けてお呼びなさい」

【鈴城 繭】
「結…様…」

結の爪は俺の中から何かを掴みだすようにゆっくりと力を込められていく。

【小鳥遊 結】
「…なぁに?」

再度、結の指は俺の首に絡みつき、次第に肌で爪の感触を味わう。
今感じる荒い呼吸は俺のものなのか、結のものなのか、薫のものなのか…

【小鳥遊 結】
「用も無いのに、ご主人様の名前呼んだらダメでしょ?」

【鈴城 繭】
「…はい」

【小鳥遊 結】
「いい子ね…」

結が俺に笑顔を向けてくる。その顔は昨日、この屋敷に来た事情も知らない俺を元気づけてくれた笑顔。

【小鳥遊 結】
「ようこそ、小鳥遊家へ。ボク、小鳥遊結、結でいいよ。よろしくね、繭」

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泡をまとった俺の手は薫の肌を洗うべく、ゆっくり伸びていく。
不安、緊張、興奮…様々な感情の中、女性の身体を洗うという初めての経験。

冷静でいられるわけがなかった。
震えそうになる手を必死で抑え、薫の肌を泡で覆い隠すように包むように滑らせていく。

【小鳥遊 薫】
「んあっ♪」

不意に艶っぽい声が浴室にこだまする。

一瞬何が起こったのか理解できず、反射的に薫から手を離そうとするも薫が俺の腕を掴んでくる。

【小鳥遊 薫】
「まだです…まだ、終わってませんよ?しっかり最後まで言いつけた事、してもらわないと……困ります」

意外と腕を抑える力が強く、薫から離れることが出来ない。
恐怖心を抱えながらも指先に力を入れていく。
泡にまみれた手では、滑らかな質感しか伝わってこない。

【鈴城 繭】
「すみません、慣れてなくて……」

【小鳥遊 薫】
「んんっ…他人の身体を洗うのに慣れてるようには見えませんので、想定内です。
けど、優しくしてくださいね?乱暴にしたら、…イヤですよ?」

俺に向けて、微笑んでみせる薫は昨日から見せられた冷たい感じではなく、
何と表現していいか分からない薫の表情に恐怖感は積もるばかりだ。

けど、今は言われた通り、泡まみれのこの手で薫を洗う事だけに集中する。…はずだった。

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